2022.09.13
電気自動車(EV)だって、いつかは寿命をむかえて廃車になる時が来ますよね。
内燃機を原動機とするガソリン車などの廃車と、モーター駆動の電気自動車では、、、
どちらの車が、高価買取りになるのでしょうか??
最近の新聞紙面に「EV」の文字を見ない日は無いっ!
と、いうくらいEVと言う文字が当たり前になってきました。
少し前までは、EVのあとにカッコ書きで“電気自動車”とか、“Electric Vehicle”とかの注訳がついていたものですが、もう必要ない段階にきましたね。
EVはCEV(クリーン エネルギー ヴィークル)の代表選手であり、経済産業省の次世代自動車振興センターが、普及促進でCEV補助金を出しています。
もっとも、2022年度分は7月に補助金残りが約177億円となり、10月末頃に予算切れになるとかならないとか。
この次世代自動車振興センターへの苦い記憶は、私たち自動車リサイクル業界人なら覚えているでしょうか?「スクラップインセンティブ」のことを・・・
2008年のリーマンショックによる不況で打撃をうけた、自動車販売台数回復と経済テコ入れから「エコカー補助金」として、初年度登録より13年以上経過した自動車を15条抹消(永久抹消登録)して新車に乗り換えると25万円、軽自動車でも12万5千円もの助成が頂けるという制度でした。
2009年4月10日から開始で、2010年3月末までの予定で始まったのですが2010年度補正予算を受けて2010年9月末まで延長が決まりました。
事前のアナウンスで、募集期間の終わりを待たずに予算が枯渇した段階で終了すると告げられていたのですが、9月末まで持たずに、9月21日で受付が終了しました。
駆け込みで間に合わなかった方々の阿鼻叫喚や、怒声が飛び交い販売店の移動報告担当の女性スタッフが鬱になるくらいだった事を記憶しています。
このCEV補助金の行方は、どうなるか分かりませんが・・・
EVは、大幅に販売台数が増えることになり、それは未来の廃車にEVが混じってくることを意味します。
そこで現在主流を占めている、ガソリン車やハイブリッド車がスクラップされた場合と、EVがスクラップされた場合を、自動車リサイクルの観点から見てゆきます。
(2022年11月9日追記)
2022年11月2日の経済産業省の発表によると、10月31日時点で予算残高は約36億円とのことです。
また、車両及び外部給電器の受付終了見込み時期は、11月中旬目処になりそうとのことです。
しかし、日本政府は11月8日に、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」の2次補正予算案を閣議決定しました。
CEV補助金の追加予算は、現行比1.5倍になる700億円規模を予定しており、電気自動車などへの補助金は年度ベースで1千億円を超えることになります。
これで近年での最大規模の補助金交付制度になりました。
この2次補正予算案を閣議決定により、CEV補助金は切れ目なく支給されることになりそうですね。
今後の追加予算などは、次世代自動車振興センターのサイトから確認できるでしょう。
(追記:ここまで)
電気の力を使って走るのが“電気自動車”であることは間違い無いのですが、“充電方式”等で4種類に分かれます。
ZEV(Zero Emission Vehicle:ゼロ エミッション 車)として、二酸化炭素(CO2)などを含む排気ガスを排出するかしないかで分ける方式もあります。
バッテリー式電気自動車の略で、ZEVと認められます。
EVと言えば、このBEVを指していることが多いようです。
まれに、ピュアEVと亜流な呼ばれ方をされているケースもあります。
BEVの長所は、何と言っても“エコ”であることでしょう。
ガソリン車と違い走行中に二酸化炭素の排出がゼロであり、エコカーの代表、カーボンニュートラルの代表と言えることでしょう。
走行距離で換算した場合、ガソリン代よりも電気代の方が安価だという試算もあります。
モーター駆動による、スムーズな加速も魅力的であることもあり、BEVの加速を知ったらガソリン車などの内燃機車には戻れないと言われたくらいです。
BEVの短所は、他の車種に比べて航続距離が短いことでしょう。
また充電にかかる時間も、自宅などで行う3Kwh普通充電器だと約16時間かかります。
急速充電器では、8割程度の充電で約40分かかり、ガソリンなどの液体燃料の様に街角でスムーズにという感じにはなりません。
車両価格はガソリン車に比べて高くなっていることも短所と言えるでしょうが、普及台数が増加傾向にあるので、価格の低下と充電スタンド整備も進んでゆくでしょう。
代表車種としてだと、トヨタだとbz4X、C+podなど、日産だとリーフ、アリア、サクラなど、三菱だとekクロスEV、i-MiEVなどで、もちろんテスラやBYD等々の海外勢もございます。
ハイブリッド車自動車の略でZEVと認められません。
ハイブリッド=掛け合わせの意味のとおり、エンジンとモーターの掛け合わせ車(ハイブリッド車)です。
沢山の種類のHEVが走っており、現状ではエコカーの代表と言えます。
エンジンとモーターの駆動方式と充電方式の仕組みによって「シリーズ方式」「スプレッド方式」「パラレル方式」の3種類に区分されます。
「シリーズ方式」とは、駆動はモーターのみで行い、エンジンは発電させた電気の蓄電のために稼働させれる方式で、日産ノートなどのe-POWERが、シリーズ方式で走ります。
「スプレッド方式」とは、エンジンの駆動も、モーターの駆動も双方の得意分野で使い分ける方式です。
低速でモーター、高速でエンジン、急加速などのパワー走行で、モーター+エンジンの力を使い分ける方式で、代表車種はプリウスです。
「パラレル方式」とは、基本走行はエンジンの駆動が主体で走ります。
モーター駆動は補助で使い、発進などの加速時にモーター駆動によりエンジン駆動を補助させて燃費向上を狙っており、マイルドハイブリッドなどとも呼ばれています。
このパラレル方式は安価なコストで実現できるので、軽自動車への採用が多いです。
プラグインハイブリッド自動車の略で、ZEVと認められるかは駆動バッテリーのみで走れる距離によって異なります。
アメリカのカリフォルニア州では、2035年までに新車販売の100%をZEVにする法案が可決されていますが、PHEVは駆動バッテリーのみで50マイル(80キロメートル)以上走行出来なければZEVと認め無いとしています。
プラグイン(Plug in)の名のとおり、BEVのように外部電源からの充電方式が可能です。
ほとんど、HEVとの差異が無さそうに感じますが、駆動バッテリーが10~20KwhとHEVの1Kwhに比べて大容量であることは大きな差異ですね。
近年では、自然災害時の緊急電源としても見直されているところでもあります。
充電スタンドが無くても、ガソリンエンジンの駆動で充電と走行ができるので航続距離に不安が無いのは、大きなメリットですね。
燃料電池自動車の略で、ZEVと認められます。
実用化されているのは、トヨタのミライ及び、ホンダのクラリティ FUEL CELLの二車種です。
水素を燃料としており、水素と酸素の化学反応から電気を得てモーター駆動をしていて、二酸化炭素の排出はゼロです。
問題は、車両価格と電気自動車の充電スタンドよりはるかに少ない水素充填設備でしょう。
同じモーターの駆動BEVが急速充電で約40分に対して、FCEVの水素充填は約3分と短く、インフラの整備さえ整えば、利点が多いのも事実です。
トヨタが、EV(電気自動車)ではない、水素カー(水素燃焼エンジン)の水素GRヤリスのデモランをWRC(世界ラリー選手権)で走らせた、そのドライバーがあの“ユハ・カンクネン”!のニュースが流れてきてワクワクしている筆者ですが、スーパー耐久で走っている水素カローラ同様に水素GRヤリスは内燃機エンジン搭載なのでFCEVでは無いことに留意する必要があります。
トヨタとしては、同じ水素を燃料として使う場合でも、燃料電池と内燃機関とを明確な違いを認識して欲しいところなのでしょう。
そもそも、電気で動くモーターには「直流モーター(DCモーター)」と「交流モーター(ACモーター)」の二種類に分けられます。
直流とは、DC(Direct Current:ダイレクト カレント)と表記され、時間が経過しても電流のプラスマイナスの極性や大きさが変化しません。
乾電池や、バッテリーが、直流(DC)です。
交流とは、AC(Alternating Current:オルタネーテイング カレント)と表記されるように時間の経過と共に、電流のプラスマイナスの極性や大きさが周期的に変化します。
1秒間に、極性変化した回数を“周波数(Hz:ヘルツ)”と言います。
家庭用のコンセントが、交流(AC)であり、静岡県の富士川を境にして西日本は60Hz、東日本は50Hzとなっています。
明治時代に、関西ではアメリカから60Hzの発電機を輸入し、関東ではドイツから50Hzの発電機を輸入したの原因だという話は有名ですよね。
ほとんどのEVには、「交流モーター(ACモーター)」が採用されています。
直流モーター(DCモーター)の場合、脈流・RC(Ripple current:リップル カレント)のように、抵抗器を入れるか接点の入り切りなどで、電流の大きさを変化させてモーター出力をコントロールすることしか出来ないので非効率です。
交流モーター(ACモーター)の出力をコントロールする場合、周波数の大きさを調節することで電圧を変えてモーターに流れる電流を制御出来るので効率的です。
この周波数により電圧をコントロールする部品を「コンバーター」と言います。
駆動用バッテリーは直流(DC)にて貯めてあるので、交流(AC)に変換するための「インバーター」と合わせてコントロールさせれます。
そもそもモーターには直流(DC)モーターと、交流(AC)モーターの2種類があります。
モーターの基本的な構造は、モーター内のコイルに電気を流すことで磁界を変化させて回転させています。
電気を流して回転する部分を「ローター(回転子)」といい、EVの場合は出力軸となります。
ローターを回転させる力を発生する部分を「ステーター(固定子)」といい、モーターの外側に位置します。
直流電源(DC)を使用して駆動する「ブラシモーター」のステーター(固定子)には永久磁石が使用されます。
ブラシモーターのローター(回転子)のコイルに、電気を流して磁界を発生さるのですが、回転するローターに電気を流すために固定されたブラシが必要となります。
回転するローターに、固定されたブラシが接触し続けるのでブラシは摩耗します。
ブラシモーターは、構造が簡単でコストは安価ですが、ブラシ接触による騒音が発生します。
交流電源(AC)を使用して駆動する「ブラスレスモーター」は、ステーター(固定子)のコイルに電気を流して磁界を発生させます。
ブラシレスモーターのローター(回転子)には永久磁石が使用されており、ローター(回転子)の回転に合わせてステーター(固定子)のコイルに電気を流しています。
回転数は周波数でコントロールできますし、トルクは電流で制御できます。
この回転数とトルクの制御がしやすい特徴は、EVモーターとしては最適であります。
また、ブラシが無いのでメンテナンス作業が容易であり、騒音が少ないというメリットがあります。
EVに使用されているブラスレスモーターには、精密にローター(回転子)位置を検出するセンサーや、回転スピードとトルクなどが、アクセルと連動して最適になるように演算するECU(エレクトリック コントロール ユニット)が必要となります。
交流(AC)モーターに流れる電流は、当然ながら交流電流です。
しかし、駆動用バッテリーに蓄電される電気は直流です。
従って、駆動用バッテリーの直流の電流を、三相交流に変換する「インバーター」が必要となります。
回転運動をするモーターは発熱しますが、直流から交流への変換にも発熱が伴うためにインバーターとモーターには「冷却機能」が必須でもあります。
低速から高速まで、加速減速を繰り返す自動車の走行には、減速機と呼ばれる「トランスアクスル(トランスミッション)」を利用して、モーターの回転をタイヤに伝える必要があります。
ギア比やギア数は、エンジン車のように多段である必要は無いですが、モーター出力を大きくしてスピードを出すにはモーター本体が大きくなりがちなので、モーター出力とギア構成でコンパクトに抑えることが出来ます。
「モーター」に、これら「インバーター」「冷却機能」「トランスアクスル」を、加えたものが「eアクスル」と、呼ばれています。
自動車メーカーでも開発していますが、部品メーカーである日本電産や、明電舎、三菱電機、ボッシュ、日立アステモ、マレリなどがパッケージ品としてeアクスルの開発を急いでいます。
eアクスルが部品として納品されれば、自動車メーカーは車台そのものを開発に特化できることがメリットです。
開発競争でeアクスルの小型化が実現すれば、自動車のデザインに大きな影響が出ます。
部品メーカーの生産量が増えれば、コスト低減になります。
一方で、EVの肝であるモーターとインバーター、冷却機能、減速機を部品メーカーが補ってしまえば、自動車の生産は、ある意味容易になるので新規メーカーが増えることも意味します。
トヨタ自動車では、系列のアイシン、デンソーと共にブルーイーネクサスを設立してEV部品開発を進めていますし、日産はジャトコに出資して変速機のギア技術を活かした開発を急いでいます。
EVは、エンジンを搭載しない代わりにモーターが搭載されます。
モーターに銅が使われているだけではなく、駆動用バッテリーからの電気を流すためにも電気配線ワイヤーハーネスが多用されます。
銅を加工して、線状、棒状、テープ状、板状にしたものを伸銅(しんどう)と言います。
モーター部には、伸銅が多用されています。
もちろん、エンジン搭載車にもワイヤーハーネスなどとして伸銅は多用されています。
一般的な5ナンバー枠乗用車クラスの伸銅使用量は、下記の通りです。
伸銅使用量
車 種 | 1台あたりの伸銅使用量 |
エンジン搭載車 | 約23Kg |
ハイブリッド車(HEV) | 約40Kg |
プラグインハイブリッド車(PHEV) | 約60Kg |
バッテリー電気自動車(BEV) | 約83Kg |
もっとも、銅は素材価格が高いのでアルミ製のワイヤーハーネスである、アルミハーネスの採用比率も高いので、伸銅使用量は減る可能性もあります。
アルミハーネスは、伝導率は伸銅ハーネスに比べ劣りますが、重量は30%から40%軽量化できます。
使用例では、30系プリウスでは駆動用バッテリーからのワイヤーハーネスはアルミハーネスが使用されています。
一般的なエンジン搭載車をリサイクルして得られる代表的な素材は、下記のとおりです。
重量比は、おおよそ50%~70%で、一番多く使用されている金属です。
強度の高さから、シャーシや、ボディ、鋳物エンジンブロック、鉄ホイール、ギア、サスペンション等などに使用されています。
薄く板状に加工されたものから、硬くて丈夫な塊に加工されたものや大きさで、販売時の鉄のグレードが分かれます。
重量比は、おおよそ10%~22%で、二番目に多く使用されている金属です。
エンジンシリンダーヘッド、アルミ製エンジンブロック、ミッションケース、ロアアーム、アルミハーネス、アルミホイール等などに使用されています。
ケイ素などを配合して強度を上げてある部位も多く、軽くて強度があることから自動車の軽量化に寄与するので多用されています。
素材販売時の価格は、部位のよって分かれます。
重量比は、おおよそ1%~2%未満ですが、電気を流すのに必要不可欠な素材です。
伝導率が高いレベルで安定しており、ワイヤーハーネスとして使用されています。
セルモーター、ダイナモ、ワイパーモーター、パワーウィンドウモーターなどの内部にも、伸銅が使用されています。
重量比1%未満ですが、価値の高い素材です。
エアバックやエンジンなどを制御する回路基板には金/銀が使用されています。
カーナビや、オーディオ類を制御する回路基板にも、金/銀が使用されています。
また伝導率を高めるために、ワイヤーハーネスをつなぐカプラー端子にも金メッキが施されている部位もあります。
貴金属の中でも、プラチナ、パラジウムなどの白金族金属は、エンジン排気ガスを浄化する触媒システムに使用されています。
重量比0.1%未満ですが、価値の高い素材です。
レアメタルは、名に“レア”が付くとおり“希土類”とも呼ばれており、「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、現在工業用需要があり今後も需要があるものと、今後の技術革新に伴い新たな工業用需要が予測されるもの」と定義付けられています。
そもそも取れる量が少ないうえに、精錬して取り出すことも技術的にもコスト的にも困難な素材です。
EVのモーターには、レアアースである“ネオジム(Nd)”が多用されています。
EVの動力源である、駆動用バッテリー(二次電池)は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの種類が多いですが、その電極を含む内部には、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などが使用されています。
その他、プラ類、布生地、ゴム、ガラスなどの重量比は15%~30%程度を占めます。
フロントガラスや、シート、ダッシュボード、バンパーなどが、その他にあたります。
近年では車台軽量化のために、リアゲートやフェンダーなどの外装部品をポリプロピレン(PP)と呼ばれる樹脂製も存在します。
その他の素材の多くは、素材としてリサイクル可能ですが回収コストや再資源化コストが高いことから、ほとんどが、シュレッダーダストになります。
EVと、エンジン搭載車とが車齢を全うして“廃車”になった場合…
EVとエンジン搭載車の、どちらが高価買取り可能なのでしょうか?
エンジン搭載車の素材重量比
素材の種類 | 重量比率 |
鉄 | 50%~70% |
アルミニウム | 10%~22% |
銅 | 0.5%~2% |
貴金属 | 1%未満 |
レアメタル/レアアース | 0.1%未満 |
その他の素材 | 10%~30% |
重量比率では、圧倒的に鉄が多くの割合を占めていますね。
自動車重量比から、仮に1,000Kgだったとした場合、廃車ボディ50%なので〈1,000Kg×50%=500Kg〉になります。
素材の価格は、需給によって変動します。
また地政学的な理由でも大きく価格は変動するので、単純な対比をする事が難しいのですが、鉄素材でも一番容積が大きいボディ(ドア等を含む骨格全体)を“1”とした際の価格比率を考えてみます。
エンジン搭載車の価格比率(廃車ガラを“1”とした場合)
素材の種類 | 価格比率 |
鉄(廃車のボディ) | 1 |
鉄(足回り等) | 1.5~2 |
アルミ(エンジン等) | 3~4 |
アルミホイール等 | 8~11 |
銅 | 15~18 |
銅(モーター類) | 3~4 |
貴金属 | 40~60 |
レアメタル/レアアース | 300~400 |
その他の素材 | -200~-250 |
例にすると、仮に廃車のボディが、〈“1”=10円〉とした場合、アルミエンジン等は、〈“3”×10円=30円〉となります。
素材価格は変動しますが、その素材毎の価値がある程度一定なので、重量比率を乗算するとエンジン搭載車のリサイクル価値(R価値)が算出されます。
エンジン搭載車のリサイクル価値(R価値)
素材の種類 | 価格比率 | 重量比率 | R価値 |
鉄(廃車のボディ) | 1 | 50% | 0.5 |
鉄(足回り等) | 1.5 | 20% | 0.3 |
アルミ(エンジン等) | 3 | 15% | 0.45 |
アルミホイール等 | 8 | 2% | 0.016 |
銅 | 15 | 1% | 0.15 |
銅(モーター類) | 3 | 1% | 0.03 |
貴金属 | 40 | 0.5% | 0.2 |
レアメタル/レアアース | 300 | 0.5% | 1.5 |
合 計 | 3.146 |
その他の素材はシュレッダーダストであるので、自動車リサイクル料金によって処理代が担保されていますので計算には入れません。エンジン搭載車のR価値は、3.146と算出されました。
EVの素材重量比
素材の種類 | 重量比率 |
鉄 | 50%~70% |
アルミニウム | 5%~15% |
銅 | 10%~15% |
貴金属 | 1%未満 |
駆動用バッテリー | 20%~30% |
その他の素材 | 10%~30% |
重量比率では、エンジン搭載車同様に圧倒的に鉄が多くの割合を占めています。
大きな違いは、駆動用バッテリーの重量比が高いことと、排気ガス浄化装置である触媒が無いことです。
EVの雄と言えばTESLA MOTORSですが、テスラモデルSの車両重量は2,108Kgです。
その、モデルSの駆動バッテリー重量は500Kgを超えており重量比は約23.7%となります。
日産リーフの車両重量は1,590Kgで駆動用バッテリー重量は約315Kgで重量比は約19.8%です。
三菱アイ・ミーブの車両重量は1,100Kgで駆動用バッテリー重量は約230Kgで重量比は約20.9%です。
エンジン搭載車と同様に、EVでの鉄素材で一番容積が大きいボディ(ドア等を含む骨格全体)を“1”とした際の価格比率を考えてみます。
EVの価格比率(廃車ガラを“1”とした場合)
素材の種類 | 価格比率 |
鉄(廃車のボディ) | 1 |
鉄(足回り等) | 1.5~2 |
アルミ(エンジン等) | 3~4 |
アルミホイール等 | 8~11 |
銅 | 15~18 |
銅(モーター類) | 3~6 |
貴金属 | 40~60 |
駆動用バッテリー | 0~15 |
その他の素材 | -200~-250 |
例にすると、仮に廃車のボディが、〈“1”=10円〉とした場合、アルミエンジン等は、〈“3”×10円=30円〉となります。
素材価格は変動しますが、その素材毎の価値がある程度一定なので、重量比率を乗算するとEVのリサイクル価値(R価値)が算出されます。
EVのリサイクル価値(R価値)
素材の種類 | 価格比率 | 重量比率 | R価値 |
鉄(廃車のボディ) | 1 | 50% | 0.5 |
鉄(足回り等) | 1.5 | 20% | 0.3 |
アルミニウム | 3 | 5% | 0.15 |
アルミホイール等 | 8 |
2% |
0.016 |
銅 | 15 | 2% | 0.3 |
銅(駆動用モーター類) | 4 | 2% | 0.08 |
貴金属 | 40 | 0.5% | 0.2 |
駆動用バッテリー | 0~15 | 20% | 0~3 |
合 計 | 1.546~4.546 |
その他の素材はシュレッダーダストであるので、自動車リサイクル料金によって処理代が担保されていますので計算には入れません。
EVのR価値は、1.546~4.5446と算出されました。
R価値の比較
エンジン搭載車 | EV |
3.146 | 1.546 ~ 4.5446 |
R価値の比較の結果、約1.4~1.6ポイントの差が出ました。
EVが廃車になった場合、2022年の素材価格に当てたエンジン搭載車価格差は約40,000円安くなるか、駆動バッテリーが高額な場合は35,000円高くなる計算です。
差駆動用バッテリーの価格さで75,000円も開きが出ることになります。
EVの廃車は、高価買取できるのか?と、聞かれた場合、ほとんどの車両は、同クラスのエンジン搭載車より、少し安い金額を提案することになります。
しかし、高価買取りの道が閉ざされた訳ではありません。
R価値を大きく左右する要因は、どこにあるのでしょうか?
それはエンジン搭載車と、EVの素材構成比にあります。
自動車の恰好をしている以上、車の骨格を生成する鉄素材の比率は大きく違いません。
エンジン搭載車の価格を大きく左右するのは、エンジン素材のアルミニウムとレアアース/レアメタルを使用している排気ガスの浄化装置の触媒装置です。
しかし排気ガスを出さないEVには、触媒装置がありません。
またEVにはエンジンが無いのでアルミニウム使用重量が大きく減ります。
EVなので、エンジン搭載車での伸銅使用量平均の23Kgに比べてEVの伸銅使用量平均83Kgと増えています。
EVのリサイクル価値を大きく左右するのは、駆動用バッテリーです。
2022年時点でのEV駆動用バッテリーの価格はバッテリー構成素材の違いや、車種、グレードによって相違しますが¥0~¥150,000と大きく差があります。
黎明期のEVの場合、ほとんどが0円から5,000円程度の価格での回収となります。
EVバッテリーには、ニッケル(Ni)を原料としたものと、リチウム(Li)を原料としたものがあります。
本稿を執筆している2022年9月の段階で、前月8月の価格はニッケルが約3,000円/Kgに対して、リチウムは約1,300円/Kgです。
リチウムの価格は、コロナ渦による鉱山からの採掘が停止していた影響で急沸しましたが、コロナ渦前の価格は約300円~600円程度でした。
つまりコロナ渦前は、ニッケルはリチウムの5倍~10倍の価格で取引されていたのです。
従って、素材としての価値が高いのはニッケル水素電池であり、リチウムイオン電池は安価となります。
しかもリチウムイオン電池内の、リチウムは“腐食性”と“禁水性”が非常に高く反応するために、リチウムの処理は高コストとなります。
それらの理由から、EV駆動用バッテリーの素材価格は安価なモノから高価なモノまで価格差が発生します。
しかし、各自動車メーカーは駆動用バッテリー素材の“CAR TO CAR”を目指すだけではなく、“Refabricate(再製品化)による Resell(再販売)”を目指してリサイクルルート確立に動いています。
日産自動車は住友商事と共に、フォーアールエナジー株式会社を設立し福島県双葉郡浪江町にてEVの駆動用バッテリーの買取りを始めました。
4R Energy Corporation買取り事業へのリンク
https://www.4r-energy.com/contents/purchase/
対象車は、日産自動車のリーフ(LEAF)と、e-NV200の車載電池で、型番はZE0、AZE0、ZE1、e+です。
素材としてリサイクルはもちろんのこと、まだ使用できるセルのモジュール構成の変更をして、電圧や容量を調整して再製品化することや、再生エネルギー貯蔵や災害時のバックアップ電源用途などに再販売を目指しています。
トヨタ自動車のbZ4X(XEAM10・YEAM15)の駆動用バッテリー 回収・リサイクルマニュアルを確認したところ、自動車再資源化協力機構のLiB回収が指定されているので0円での回収ということなのでしょう。
bZ4Xの駆動用バッテリー 回収・リサイクルマニュアルへのリンク
回収されたバッテリーは、素材リサイクルや再製品化を目指しています。
EVと言えば、Teslaの車両はどうなのでしょうか?
テスラモータースのリチウムイオン バッテリー緊急時対応ガイドへのリンク
バッテリー緊急時対応ガイドには、Teslaの施設に返却するように記載されています。
企業サイトを確認すると、寿命が終了したTeslaのバッテリーパックはテスラサービスセンターにて対応するとの記載があります。
そのバッテリーパックの回収料金の記載は、見つかりませんでした。
現状、EVの駆動用バッテリーは、無料でメーカーによる回収か安価な工賃程度がほとんどのようです。
日産系のように、バッテリーセルのセグメント値による買取り価格査定を導入しているメーカーは少ないです。
しかし、駆動用バッテリーの買取り価格は、三週間後に判明するので廃車の買取り提案に反映させるには困難となります。
つまり現在の主流である、リチウムイオン電池の中身に使用される素材価格が安い限り、EVが廃車になった場合は、同クラスのガソリン車に比べて安価になります。
各メーカーの、素材リサイクルに対する真摯な姿勢が求められるところです。
EVと聞くと真っ先にEVモーターを思い、世界経済市況ではEVに使用される“銅”を思い浮かべるでしょう。
エンジン搭載車に使用される銅は約23Kgで、PHEVなら約60Kg。
これがBEVになると約83Kgの銅が使用されるようになり、販売される自動車がすべてEVに置き換わった場合は、約3.6倍の銅が必要となります。
銅鉱山の埋蔵量は、推定8億3,000万トンとされており、年間需要の2,800万トンに対しては余裕があります。
米国地質調査USGSによると、未開発の鉱床を入れた埋蔵鉱量は50億トン以上なのでEV需要を満たす銅の量は存在していると考えらえます。
環境負荷と、地政学的に不安定な地域に銅鉱山が多いことを除けば問題は解決出来そうです。
EVに使用される駆動用バッテリーは、
・鉛蓄電池
・リチウムイオン電池
・ニッケル水素電池
・ニッケルカドミウム電池
・全固体電池
がありますが、現状で駆動用バッテリー(二次電池)に使用が多いのはリチウムイオン電池です。
リチウムイオン電池にはリチウムの他に、電極にはコバルト・ニッケル・マンガン・鉄・アルミ等々が使用されています。
米国地質調査所USGSの調査ではリチウムの埋蔵量1,400万トンとされており、現在のペースで採掘しても400年分は採掘出来ると言われています。
しかし電極に必須な素材とされている、コバルトに関しては微妙です。
米国地質調査所USGSの調査ではコバルトの埋蔵量740万トンとされており、年間採掘量10万トンを考えると約60年程度でコバルトは枯渇すると言われています。
しかもコバルト生産量の58%はコンゴ民主共和国で採掘されていますが、地政学的にも政治的にも不安定要素が多いようです。
駆動用バッテリー(二次電池)の開発者は、流通量が豊富で安価な素材からのバッテリー開発を急いでいます。
自動車メーカーは、販売したEVの駆動用バッテリー(二次電池)からの素材回収をする技術開発を急いでいます。
また、素材価格が高い銅の使用量を減らす工夫をしています。
EVの航続距離を伸ばすために車台骨格や外装パーツに、鉄よりも軽いアルミ素材やPP(ポリプロピレン)も多用されるようになるでしょう。
また、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)燃料電池自動車の水素タンクの補強には炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)が使用されていますが、車台骨格や外装パーツにも炭素繊維強化プラスチックを使用する試みもあります。
これまで金属系の素材で作られていた自動車が、強度や軽量化のために新素材が開発されているのです。
この炭素繊維強化プラスチックの、リサイクル方法は未確立です。
急速に普及しつつあるEVは、あと数年もしたら廃車になって来ます。
現在流通しているEVでも、リサイクル方法が未確立な部分が多く困難道のりが続きます。
私たち自動車リサイクル業者は、駆動用バッテリー(二次電池)のリサイクル方法の確立を含めた新素材全般に対応が求められることになります。
対応できる廃車リサイクル業者だけが、このEV商流に乗ることが出来て「EVの廃車」も高価買取りすることが出来るのでしょう。
私たち近松商会は、EVの廃車にも対応してゆきます。
以上