2024.02.06
エアバッグとは、搭乗者の命を守る大事な部品です。
最初エアバッグは1981年にメルセデスベンツSクラス(W126型)に、オプション装備品として搭載されました。
日本では、1987年にホンダレジェンドの運転席にオプション装備として搭載されたのを初めてです。
その後、1989年にトヨタセルシオなどの高級車に標準装備されてゆきました。
飛躍的にSRSエアバッグ装着率が増えたのは、1995年に日産が新車販売する全乗用車に標準装備した辺りから、各メーカーが標準装備とすることが多くなりした。
今では、装備されてて当たり前な感じの『エアバッグ』についてです。
実際に装備されているエアバッグを見てみると、『SRS AIRBAG』となっています。
エアバッグは、風船状に膨らむ部分です。
SRSとは、
Supplemental Restraint System の、頭文字でSRSです。
Supplemental:補助
Restraint:拘束
System:システム
日本語では、『補助拘束装置』と訳されます。
拘束することを補助する…?
自動車の搭乗者を拘束するものと言えば、『シートベルト』です。
エアバッグは、シートベルトを補助する装置となります。
実際、自動車の保安基準ではシートベルト装備は義務ですが、エアバッグ装備は義務ではありません。
(“エアバッグ装着は義務なのか?”を参照のこと)
ここでは、SRSエアバッグ類と記載した場合には、シートベルトプリテンショナー等も含んだ物とします。
エアバッグが作動する仕組みとは、大きく二つあります。
・機械式
・電気式
機械式の場合、自動車に搭載された加速度センサーが急激な減速を感知すると、機械的にエアバッグ内の火薬を爆発させ、その爆風でエアバッグを膨らませます。
日本車での機械式エアバッグは、1990年から1999年製造の車両に使われており、現在の日本車では機械式のエアバッグは採用されていません。
電気式の場合、自動車に搭載された加速度センサーが急激な減速を感知すると、エアバッグ用ECUからの信号を経てエアバッグ内の火薬を爆発させ、その爆風でエアバッグを膨らませます。
現在の自動車は、運転席以外の助手席やサイド/プリテン/カーテン/ニー/ボンネット等々にまでエアバッグが装着されているので、車載ECU(Electronic Control Unit)で電子回路で制御しないと、上手にエアバッグ作動出来きません。
電気式エアバッグの場合、センサーからの動作を確実かつ迅速に電気信号を伝える必要があるので、エアバッグまわりのハーネスカプラーには、電導性能が高い金メッキが施されています。
エアバッグの作動は、ガス爆風というものの爆弾ではありません。
インフレーターと呼ばれる、金属製ケースにガス発生装置として組み込まれます。
発生したガスをエアバッグに送り込む時間は、約0.03秒です。
シートベルトのたるみを巻き取るSRSも作動させることにより、搭乗者の生命を守ります。
現在の日本での自動車平均車齢は、約15年です。
新車から、廃車になるまでの15年の間に、一度もエアバッグが展開しないのが一番良い事です。
エアバッグが開く、つまりエアバッグの作動条件としては“時速約20km~約30km以上の速度で強固な物に正面衝突した場合”です。
強固な物と言うのは、コンクリート壁であったり事故相手の車両であったりします。
しかし、電柱に衝突する事故や、トラックの荷台下に潜り込む事故や、事故相手が側面から衝突してきた事故や、スピンしながらあちらこちらに衝突する事故、雪などの柔らかい物に衝突する事故などの場合は、エアバッグの作動しない場合があります。
私たち自動車リサイクル工場では、数多くの事故車を買取りしています。
意外にも、エアバッグ作動していない事故車が多いことに驚きます。
先に記載したとおり、エアバッグはシートベルトの補助として作動します。
事故を起こさないことが、一番。
万が一の時に備えて、シートベルト装備をしましょう。
エアバックが開くような事故を感知する部分は、“インパクトセンサー”“エアバックセンサー”とか呼ばれています。
自動車の左右フロントサイドフレームに取り付けられているので、そのセンサー部を外した事故の場合は、エアバッグが作動しないケースもあります。
自動車の骨格である、フレームにインパクトセンサーが取付られるのは、自動車の骨格が歪むような衝撃を感知するためです。
つまり、エアバッグが作動するような事故とは、サイドフレームに異常がある状態であることが多いと言う事です。
では、エアバッグが作動してしまった場合、エアバッグは修理できるのか?
答えは、修理可能です。
ただし、エアバッグ類は“交換修理のみ”と、なります。
エアバッグ類が作動したら、どうするのか?
何らかの事故を起こしたと想定される状況ですよね。
エアバッグ類が作動すると、エアバッグから作動ガスの煙が出ます。
また火薬の爆発を利用して、ガスを発生させてエアバッグを膨らませるので、ガスも作動機器類も熱くなります。
その熱や煙で、車両火災につながると勘違いする人も多いです。
自動車メーカーのカタログのように、エアバッグは膨らみますが、膨らんだままではありません。
膨らんだエアバッグは、手で押せばしぼみます。
もちろん、エアバッグ作動後に時間が経っても、しぼみます。
従って事故をして、エアバッグが膨らんでも、車両からの脱出には影響は少ないです。
むしろ、煙と熱の方が厄介だと言えます。
ただSRSエアバッグ類である、シートベルトプリテンショナーが作動すると、ベルトは巻き取られてしまいます。
シートベルトのたわみも無くして、搭乗者を締め付けるので、シートベルトバックルを外すのに、多少苦労するかもしれません。
万が一の時には、脱出ハンマーに備えてあるカッターで、シートベルトごと切り離すことも必要です。
事故でパニック状態にならないで、落ち着いて車外にでましょう。
車外に出た後は、後続車に注意して安全な場所に避難しましょう。
事故を起こした場合には、四つの義務があります。
(1)運転停止義務
(2)救護措置義務
(3)危険防止措置義務
(4)警察への事故報告義務
です。
事故状況を確認し、負傷者の救護に救急車の手配、二次被害の防止、安全の確保、警察への報告に保険屋への連絡等々。
事故を起こすと、短時間に沢山の物事が降りかかります。
単独事故なら自分一人ですが、相手がある事故の場合には、事故相手も普通の心境ではありません。
互いに、エアバッグ類作動するような事故の場合には、ケガ人の保護と他の通行車や人への二次被害防止への安全対策を優先させましょう。
通常、救急車の手配をするダイヤル119を鳴らした場合、オペレーターは警察への通報の有無も確認してくれるます。
警察の到着まで、事故現場の保存をしたいと思う事もありますが、スマホで数枚の画像を撮影して、速やかに通行の安全を確保しましょう。
SRSエアバッグ類が作動してしまった場合、元に戻せるのでしょうか?
先に記載したとおり、SRSエアバッグ類は交換修理のみとなります。
SRSエアバッグ類の部品は大きく分類すると
・インパクトセンサー
・エアバッグ類ECU
・インフレーター(ガス発生装置)
・エアバック
・モジュールカバー
・シートベルトプリテンショナー
に、なっています。
エアバッグ膨らむ部分、バッグ部だけ綺麗に折たたんで戻すことが出来ても、ガス発生装置は一度しか使えません。
仮にエアバッグを戻しても、ハンドルエアバッグの場合だとホーンパッド部分のモジュールカバー、助手席エアバッグの場合だとダッシュボードは、膨らんだバッグを出すために穴が開いてしまいます。
穴の開いた、状態では膨らんだバッグだけを戻しても収まりませんよね。
また、シートベルトプリテンショナーが作動すると、ベルトは引き出す事は出来ません。
すべて巻き取られるので、再度使用することは出来ません。
では、戻せないエアバッグを修理するには、どのようにすれば良いのでしょうか?
エアバッグは戻せないことは、ガス発生装置などは一度きりしか使えないからです。
エアバッグを修理するには、交換修理しか方法がありません。
では交換修理の代金は、どれくらい必要なのでしょうか?
実際の部品カタログから確認してみました。
調べた50系プリウスだと、メインのエアバッグ部品だけで25万程度はしました。
となると車種によりますが、全てのSRSエアバック類を交換することになると、20万円~30万円は必要です。
事故でエアバッグが開くと廃車になる・・・
エアバック作動していても技術的には修理が可能な損傷でも、部品代を含んだ修理代金が、その自動車市場価格より高くなってしまうなら、同程度の違う車に乗り換えても中古車の方が安く済むケースもあります。
部品代が高額なSRSエアバッグ類のからむ修理は、その修理金額の方が中古車価格より高額になる場合も多いからです。
エアバッグ作動させるセンサーは、左右サイドフレームに装着されています。
自動車の骨格である、フレームに歪みや衝突を受けた場合にエアバッグが作動する訳ですから、フレームに損傷を及ぼす衝撃と言うことです。
つまりエアバッグが開いてしまうぐらいの事故の場合、自動車の骨格フレームに歪みが発生している可能性が高いと言うことになります。
フレームが歪むと、走行性能に影響が出ます。
フレームには、サスペンションやエンジン、ミッション、ステアリング等々の走りに関係する重要な機能部品がつながっています。
フレームが歪んだ状態で影響が出ることは、容易に想像できますよね。
最近の鈑金整備技術は、非常に高くなっています。
修理に使用するフレーム修正機の性能が向上したことや、整備組合などが積極的に勉強会などを開催しており技術向上に努めているからです。
しかしエアバッグ作動するような、自動車の骨格フレームに影響する事故車の場合、修理が完璧でも“修復履歴有り”の自動車となります。
中古車の販売時には、告知義務が発生するレベルとなります。
事故履歴アリの自動車は、中古車市場価格も低くなります。
従って、中古車市場価格が高額な自動車でないと、修理しても見合わない事になります。
そのため、エアバッグ作動した自動車は廃車になる事が多いのです。
そもそもエアバッグ装着車は、1990年代から飛躍的に台数が伸びました。
1990年以前の、旧車を愛情込めて乗り続けている場合、後付けでエアバッグ装着する義務はあるのでしょうか?
道路運送車両法には、“道路運送車両の保安基準”が定められています。
道路運送車両の保安基準では、シートベルトの装備義務はありますがSRSエアバッグ類の装備は義務ありません。
では、SRSエアバッグ類の装備は義務が無いのであれば、事故をした自動車のエアバッグを取外した状態で修理すれば安くなると考えられますよね。
事故修理ではなくても、社外のステアリングに交換したり、社外シートベルトに交換したりする場合、SRSエアバッグ類を取外しする事になります。
SRSエアバッグ類の装備は義務が無いのであれば、取り外した状態で車検は通るのか?
取り外しする事には問題は無いのですが、SRSエアバッグ類を取り外すと“警告灯”が点灯します。
道路運送車両の保安基準に適合しないと、車検は合格しません。
つまりエアバッグ取外したことにより、警告灯が点灯する状態では保安基準には適合しないのです。
逆に考えれば、警告灯がつかなければ大丈夫と言うことになります。
メーター内部の電灯を外してしまい、警告灯を消す方法では車検に合格しません。
車検検査員は、自動車のイグニッションキーをON状態で警告灯の点灯するかを確認します。
その後エンジン始動させた後に、警告灯が消灯しているか確認します。
車検検査員は、配線切れ、警告灯の電球切れ、又は電球の抜取りでは無いかを確認する必要があるためです。
そもそも警告灯は、ドライバーに車両の異常を知らせるための装置ですから当然と言うことになります。
カスタム仕様などのために、SRSエアバッグ類の取り外した状態でも車検を通す方法があります。
“エアバッグキャンセラー”の取り付けです。
WEB検索すれば、多くの市販品が安価で見受けられます。
ただし、純正メーカーでは無いので、何の保証もありません。
2Ωくらいの抵抗をつける簡単な自作可能な配線ですが、普通の使用する自動車にはお勧めは致しません。
ただ事実として、エアバッグキャンセラーを取付けることにより、イグニッションキーON状態での警告灯が不点灯ならば、保安基準を満たしているので、車検には合格するでしょう。
ハンドルのエアバッグの場合ならハンドル径が適正で、ホーンマーク(ラッパのマーク)があり、警告灯がキャンセルされていれば車検は通ると言う事です。
ただし、2024年10月1日より開始される予定の「OBD車検」に、エアバッグキャンセラーが対応するかどうかは微妙です。
車載式故障診断装置(On-Board Diagnostics)に、外部診断機(スキャンツール)をOBDコネクタを通して、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)を読み取ると、自動車の故障コード(DTC:Diagnostic Trouble Code)の記録が確認出来ます。
エンジン点火制御、燃料ポンプ制御、ATミッション変速、電動パワーステアリング、アンチロックブレーキシステム、横滑り防止システム、ハイブリッドシステム、ハイブリッドバッテリー充電放電状況、電動パーキングブレーキ、先進運転支援システム等々、ほとんどの電子制御されている部品の状況を、OBDスキャンツールで読み取る事が出来ます。
OBD車検は、保安基準に性能要件の規定がない装置は、規定されるまは対象外とされています。
現在のところ、性能要求に規定があるのが、排出ガス等発散防止装置、アンチロックブレーキシステム(ABS)、横滑り防止装置(ESC/EVSC)、自動ブレーキ(AEB/AEBS)、ブレーキアシストシステム(BAS)、車両接近通報装置、自動運転技術、緊急操舵技術(ESF)などで、SRSエアバックシステムは範囲外です。
ただ、OBD車検の基準は、今後の状況に応じて、重大事故、技術発展などを考慮して変わってゆく可能性があるから微妙です。
カスタムの為とはいえ、搭乗者の安全を守りたいですからね。
では、エアバッグキャンセラーを装着してエアバックを取り外した場合、任意保険はどうなるのか?
自動車保険は、装備された安全装置によって割引が設定されます。
現状では、自動ブレーキ(ASV)割引が代表格ですね。
以前は、エアバッグ割引、アンチロックブレーキ割引が存在していました。
しかしエアバッグやABSは、ほぼ標準装備となったのでエアバッグ割引は無くなりました。
従って、エアバッグ無しの自動車保険は料金変わりません。
事故を起こした際の、保険金支払いにも影響ありません。
欧州などでは規制が厳しいのですが、日本国内に限って言えば、保険会社にエアバッグ取り外したことを報告する義務もありません。
ただし民事裁判で、同乗者への安全配慮義務違反を争う場合は、どうなるか分かりません。
従って、エアバッグを取り外した場合でも、搭乗者保険の範囲になるのかを保険会社に確約をしてもらうと安心です。
エアバッグを中古販売してもいいのか?
答え:ダメです
廃車からエアバッグを取り外して、販売することは“自動車リサイクル法違反”になります。
また大量に、SRSエアバッグ類へのリコールも発表されています。
リコール品のエアバッグを中古で入手して、事故したら…
実際に、アメリカで中古エアバッグを装着したシビックで、エアバッグ暴発による死亡事故が発生しています。
エアバッグは、一度きりしか使用できません。
中古エアバッグの、作動テストする方法はありません。
人の命に係わるエアバッグは、中古で販売して良いはずは無いということです。
ひと昔前、某インターネットオークションや、某フリマサイトでは、中古エアバッグの流通が盛んでした。
2005年から施工された自動車リサイクル法では、中古エアバッグ販売を違法としています。
しかし自動車リサイクル法は、スクラップ廃車に関する法律なので、整備現場で交換などの理由により取り外された中古エアバッグの売買は適応外です。
グレーゾーンな、エアバッグ交換は本当に新品で実施されたのでしょうか?
車種によりますが、全てのSRSエアバッグ類を新品で交換すると、20万円~30万円は必要です。
だとすると、スクラップ廃車予定でエアバッグ展開していない自動車から取り外して“整備品”と言っているのではないか?
そうでもしないと、同じ出品者が沢山の中古エアバッグを所持している理由が見つからないですよね。
私たち近松商会は、一般社団法人日本自動車リサイクル機構(JAERA)の岐阜支部である、岐阜県自動車リサイクル協議会に所属しています。
自動車リサイクル機構では、自動車リサイクル促進センター(JARC)、自動車再資源化協力機構(JARP)と連名で、“ヤフオク”“ペイペイフリマ”のガイドラインを改定をしてもらうように働きかけました。
その結果ヤフオクなどでは、2020年9月から中古エアバッグ出品禁止となりました。
同様の流れを汲んで“メルカリ”なのでも同様に中古エアバッグ出品禁止が広がってゆきました。
中古エアバッグの再販売は、自動車リサイクル法違反です。
また中古で販売された、動作保証が出来ないエアバッグの安全性は誰が担保するのでしょうか?
私たちの取り組みによって、エアバッグの再販が無くなってゆくことを広げて行きたいです。
従って中古部品を販売してる近松商会ですが、エアバッグは販売出来ません。
エアバッグインフレーターはもちろん、エアバッグコントロールユニット、スパイラルケーブルなどの関連周辺の中古部品は一切の販売を致しません。
すべて、素材リサイクルを致します。
命を守る、エアバッグ類カプラー端子には、導電率の高い金メッキがしてあり有益な素材でもあるからです。
もしご自分の愛車が、中古エアバッグ装着車だとしたら…
その中古エアバッグが、水没車からの取外し品だとしたら…
湿気たエアバッグインフレーターは、暴発する危険性が非常に高いです。
エアバッグでのリコール問題と言えば、「タカタ」でしょう。
タカタ社製エアバッグは、全世界で1億台以上がリコール対象となり、日本国内でも約2,106万台以上がリコール対象となりました。
2016年6月タカタ社は、約1兆7000億円という負債総額で経営破綻しました。
その経営破綻したタカタ社の国内主要事業を引き継いだジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン(JSSJ)がシートベルトの強度データを1,000件以上改ざんしていたことも発覚しており、企業風土が怪しまれるところでもあります。
事の発端となった、タカタエアバッグリコール問題とは、何だったのでしょうか?
エアバッグリコール問題の発端となった、近松商会が紐解いてゆきます。
実は、タカタ社のエアバッグリコール問題は“2段階”で発生しました。
エアバッグ装置の内部には、ガス発生装置である“インフレーター”というモノが入っています。
インフレーターの中身は、爆発性混合物である“硝酸アンモニウム”が入っています。
第1段階は、“硝酸アンモニウム”の成形不良を由来とものです。
最初のリコール届出が、2008年11月ホンダ社製の自動車4205台が対象でした。
その後、2014年までにホンダ、トヨタ、日産、マツダ、富士重工、三菱自動車、いすゞ、GM、フォード、クライスラー、BMW、フォルクスワーゲン等々の約1600万台以上が、無償交換のリコールとなりました。
第2段階は、第1段階でのリコール対策品が原因でインフレーターの気密性不良を由来とするものです。
そもそも、第1段階の成形不良も湿気を由来としていましたが、この第2段階も湿気を由来しています。
この第2段階は、2014年12月4日に、不具合件数0件にも係らずリコールとして計185,093台の無償交換をトヨタ届出したことから始まりました。
このリコールは、予防的措置として良品交換するというもので、トヨタのお客様の命を守る姿勢が強く出ているものでした。
この第1段階と第2段階のリコール対策前の【エアバッグ暴発】が実際に工場で発生しました。
幸い、ケガ人等の被害はありませんでした。
しかしタカタ製エアバッグの異常暴発事故では、全世界で約400人が負傷、28人が死亡しています。
近松商会は自動車リサイクル法の許可工場です。
法の定めによって、エアバッグを強制的に車上展開させなければなりません。
エアバッグ処理せずに、リサイクルさせると処理過程で暴発して作業員に危険が及ぶといけないので、必ず作動処理をします。
ところが、そのエアバッグ作動処理の際に【エアバック暴発】が発生しました。
それも、何度も【エアバッグ暴発】しました。
その都度、関係機関を通して暴発事例を報告しました。
最後に暴発したのが、2014年11月6日トヨタの“WILLサイファ”という車でした。
当時は、リコール対象外の自動車でしたので、通常の手順にてタカタ社製エアバッグを車上展開させました。
通常とは明らかに違う、爆発音がして危険防止シートを突き破りエアバッグインフレーターが飛び出してしまいました。
本件も、関係機関を通して暴発事例を報告しました。
その結果、上記のWILLサイファが暴発した事例によって、トヨタ自動車は予防措置によるリコールを決定したのです。
タカタ社製エアバッグリコール問題は、この事案をきっかけにリコール対象車種は全世界で1億台以上となり、日本国内でも約2,106万台以上になりました。
ちなみに日本国内では、2018年5月の車検よりタカタ製エアバッグリコール未対応車は、車検が通りません。
「タカタ製エアバッグについては、異常破裂し、金属片が飛散する不具合が発生しているため」
と国土交通省から発表され、リコール未改修車のエアバッグインフレーターを早期に回収し交換しようとしています。
また2020年5月からは、タカタ製エアバッグ未改修車両を車検で通さない措置の対象車両を拡大されました。
それでも2019年11月末時点でのリコール対象台数は、約26万台と大量に残っています。
車検は通らなくなるので、もしかしたら輸出されたのかしれません。
正規ルートで輸出する場合には、輸出抹消する必要があるのですが、闇ルート(違法ヤード)があるのでしょうかねぇ…
いづれにせよ、暴発するようなエアバッグ装着された車には乗りたくないですよね。
ご自身の愛車が対象外であるか否かは、国産車の場合ならリコール情報検索アプリ等で調べることが出来ます。
アメリカでは2021年9月に、タカタ製エアバッグを搭載車約3000万台を、新たな調査が必要とされました。
米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、インフレーター内部の乾燥剤の劣化に伴うリスクを評価するとしています。
そもそも、インフレーターの乾燥材とはなんなのでしょうか?
第一段階 | “硝酸アンモニウム”の成形不良 | 2008年~2014年頃まで |
第二段階 | “第一段階リコール対策品”の気密性不良 | 2014年12月~現在まで |
エアバッグの風船部分を膨らませるのに、瞬間的にガスを送る部分が“インフレーター”と呼ばれます。
第一段階リコールのインフレーターは、主にメキシコにあるタカタ社モンクーバー工場で生産されたロットに多くありました。
エアバッグを安定的に展開させるには、インフレーター内部の硝酸アンモニウムをペレット状に保つ必要があります。
また、温度変化による硝酸アンモニウムの結晶の形が変わる転移を防ぐため、硝酸アンモニウムのペレットには添加剤を必要とします。
適正な爆発をして、エアバッグを展開させるためには、成形したペレットは大きくてもダメ、小さいくてもダメと、決められた大きさである必要がありました。
また、硝酸アンモニウムは吸湿性が高いという特性が強くあります。
硝酸アンモニウムのペレットが、湿気を吸い込んでしまうとペレットが脆く割れやすくなります。
タカタ社モンクーバー工場生産のインフレーターは、ペレット成型ミスがありました。
また工場内部では、湿気対策への管理が不徹底でした。
また、製造されたインフレーターの検査体制も精度が悪かった模様です。
製品検査が甘いまま、成形不良の製品も出荷していたのですが、さらに困ったことに製造後の製品検査と出荷先の記録が出来ていなかったのです。
つまり、どの自動車メーカーの、どの車に装備されたインフレーターがミスロット品だったのか分からないという状態でした。
これが第一段階のリコール原因です。
上記の内容は、2012年に本田技研工業の方から、直接お聞きしました。
なぜ、メーカーの話が直接聞けたのかは、自動車再資源化協力機構に異常作動報告を実施しているからです。
自動車再資源化協力機構にとっても、本田技研工業にとってもエアバッグ暴発はショックな事象だったハズです。
異常暴発をしたエアバッグで負傷者が出なかったとは幸いなことですが、説明責任を果たして頂けました。
(本件の自動車再資源化協力機構へ異常作動報告日は2012年8月27日、その後、同系列のエアバッグリコールは2013年4月11日付で発表されました)
では第二段階の気密性不良とは、どのような事象なのでしょうか。
第一段階のリコールにて、当時に製造されたエアバッグインフレーターは、回収され対策品に交換されてゆきました、
また新しく販売する車にも、対策品のエアバッグインフレーターが装着されて行きました。
具体的な対策として、インフレーターの吸湿を防ぐために乾燥材を入れました。
また硝酸アンモニウムのペレットと、インフレーターの間にスプリングを入れることでペレット成形時に発生する、わずかな大きさの誤差をインフレーター内部に押し付けることで、ペレットが崩れる事を防ぐと言うものです。
スプリング自体は、旧式にも入れてあったようですが…
乾燥材入りのインフレーターは、湿気らないように密封されています。
しかし事故時には、エアバッグを膨らませるためにガスを放出しなければなりません。
そのため噴出口が設けられています。
その噴出口は金属箔で封じてあるのですが、どうやらその部分に不具合があったのです。
上記のエアバッグ暴発に関して、トヨタ自動車は予防措置のリコールを実施しました。
リコール回収されたエアバックインフレーターを調べてみると、「気密性不良」なインフレーターがいくつも見つかりました。
その気密性不良のインフレーターを作動テストしてみると、数パーセントが異常燃焼しました。
異常作動したインフレーターに、部品の欠品は無かったので、内部の硝酸アンモニウムのペレットの異常か製造ミスである可能性が高いという結論でした。
上記の内容は、2015年5月13日にトヨタ自動車の方から、直接お聞きしました。
なぜ、メーカーの話が直接聞けたのかは、自動車再資源化協力機構に異常作動報告を実施しているからです。
リコールにつながる原因を報告したことへの、説明責任を果たして頂けました。
(本件の自動車再資源化協力機構へ異常作動報告日は2012年8月27日、その後、同系列のエアバッグリコールは2015年5月13日付で発表されました)
リコール届出書の記載には、“市場回収品の調査による”とあり、つまり、リコール品の回収が調査されたのです。
このトヨタ自動車のお客様第一主義の考えが、世界的な大量リコールに拍車をかけたのです。
何故、タカタ社製だけが大量リコールになったのでしょうか?
タカタ社以外にも、エアバッグ製造メーカーは複数社あります。
世界的にシェアが高い、スウェーデンのオートリブ(Autoliv)を始め、ジョイソン・セイフティ・システムズ(Joyson Safety System)、豊田合成、ZF(ZF Friedrichshafen )、現代モービス、芦森工業、コンチネンタル(Continental)などがあります。
それら多くのエアバッグ製造メーカーは、ガス発生装置インフレーター内部のペレットには「硝酸グアニジン」を使用しています。
しかしタカタ社は、「硝酸アンモニウム」を使用しました。
硝酸グアニジンよりも、爆発力が強いのでインフレーターを小型化に出来ることがメリットです。
デメリットとして、温度変化によって結晶の形が変わる“転移”という現象が起こる事です。
硝酸アンモニウムが転移する温度は、氷点下以上から100℃以上ですので、自動車の車内ではいつでも転移が起きる可能性がありました。
転移すると、膨張します。
しかも硝酸アンモニウムは吸湿性が高く、湿気た硝酸アンモニウムペレットは割れます。
硝酸グアジニンも、硝酸アンモニウムも火薬です。
爆発を適切な状態でコントロールするためには、転移して膨張したり、湿気て割れてしまった状態では製造時に想定したとおりの爆発に出来ないのです。
その結果・・・ タカタ社製エアバッグは異常燃焼を起こし暴発したのです。
湿気たエアバッグが危険ということが理解できれば、水没車/冠水歴のある自動車のエアバッグが、とても危険な状態なのかもしれないは容易に想像がつきますよね。
リコール対象が増えてゆくのも心配ですが…
インフレーター内部の火薬は、消費期限とかは無いのかが、今後の心配です。
万が一の事故の際に、火薬の爆発不足でエアバッグが性能通りに膨らまないなどと言う事が無いでしょうか。
今後も、メーカーさまには開発研究を進めて欲しい所であります。
エアバッグが作動させないような、安全運転が一番大事なことです。
しかし、不慮のもらい事故もあります。
エアバッグは、シートベルトの補助装置だということを理解して、シートベルト全席装着を徹底しましょう。
エアバッグを取り外しても、車検を通す方法はあります。
しかし、安全性が低下するのは否めません。
エアバッグが開いた場合、戻すことはできません。
エアバッグを修理する場合、新品で修理するしかありません。
違法な中古エアバッグを取り付けて、事故時に作動しなかったり、暴発したりしたら…
誰が、どう責任取るのでしょうか?
廃車を英語に訳すと、”End of Life Vehicle”と言います。
略して、ELVです。
寿命の終わった自動車、ELV=廃車。
私たち近松商会の願いは、エアバッグを作動させない安全運転で、車齢を全うした廃車になることです。
そんな廃車を、大切にリサイクルしてゆきます。
リサイクルの一環として、“エアバッグ”を“バック”に「アップリサイクル」しました。
エアバッグの風船部は、東レや東洋紡が作っているナイロン66を基布としていて、とにかく丈夫なのです。
廃車時には、車上展開されて廃棄処分になってゆくのですが、大切にリサイクルする気持ちで取り組んでいます。
どうか、そんな私達に「廃車をお売りください」、よろしくお願いいたします。
以上
2024/2/6:追記
「エアバック ⇒ エアバッグ に、表記を修正。 ご指摘頂いたユーザー様、ありがとうございます。